【ジェクブラ気味短文】ザナルカンド遺跡にて(さいがわも)

2014年01月11日 22:41

 くずはは明日、インテ大阪に参加するらしい。
 楽しんでこいよー。



 そして俺は、今年一発目のジェクブラ文をアップだぜ。
 こいつも添削したら短編集に入れるつもりだ。
 さて、どんだけ変わるかねぇ。



 ブラスカ一行がザナルカンド遺跡に到着した直後あたりの、ジェクト一人称な散文です。
 ジェクトがナチュラルにちょっかい出してるし、ブラスカも受け入れ気味な甘党に化けてますが、それでもよければ。







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 幻光虫が大量に飛び回る中で、オレ達は足を止めていた。ザナルカンド遺跡の入り口で、語り部じいさんの話を聞いてたら、すっかり日が暮れちまったのは、まあ仕方ねえだろう。けど、オレの帰りたかったザナルカンドにゃ戻れねえことは、話の中に出てきた歴史から、何となくわかった。旅するあいだに、一旦諦めをつけたはずなんだけどな。
 歩いてるうちに、見覚えのある道がオレの記憶にある映像と重なって、走った先で、オレのザナルカンドじゃオレの家だった場所に辿り着いた。後ろを追ってくる二人の静止も聞かずに、へしゃげた扉を蹴破って覗いたそこは、別の世帯の住み処だったらしき、船の残骸だった。
「ジェクト! 勝手に ――」
 走り出したことを怒るアーロンが、オレの肩を掴んで振り向かせたとたん、口をつぐんだ。それから、下向いて、背中を向けた。入れ替わるようにオレの正面に立ったブラスカが、オレの脇をすり抜けて、船内に入っていく。かつて人の暮らした痕跡をぐるっと見回して、召喚士は頷いた。
「魔物はいないようだな。今晩はここで休もう」
 外にいたオレ達ガードを呼んだブラスカは、散らかる瓦礫の中から灯りになりそうなもんを探し始めた。が、スピラじゃお目にかかれないような道具器具を前に、早々に両手を挙げちまった。エボン教の底の方まで知ってて、機械にも理解のあるこいつがこんなじゃ、アーロンはハナからだめだろう。二人が揃ってオレを見てくる。……わーったよ、点けてやるって。
 オレ達にくっついて紛れ込んだ幻光虫を、「ほれ光源、あっちだあっち」と押すように誘導する。奥まで進んで、そこがキッチンであると確かめてから、オレは天井近くに電源を求めた。ブレイカーを上げたとたん、足元だけを照らすおぼろ気なライトが点く。千年ぶりに灯った家中のフットライトを頼りに、リビングへ戻るなり、ブラスカのはしゃぐ声がオレに向けられた。
「ジェクト! 勝手に動き始めたぞ!」
 落ち着け一児の父よ。アーロン呆れて、眉間にシワ寄せてんぞ。
「……ああ、当時の記録スフィアが入ったまんまだったのか」
 ブレイカーを上げたとたん動きだしたらしいスフィアモニターは、オレの知っているザナルカンドとよく似た景色を浮かび上がらせて、召喚士の目を楽しませてた。
 撮影者は、身丈や映像の安定感から、男だとわかる。夜のフリーウェイを歩いているらしい。建ち並ぶ高層ビル。巨大なスクリーンに映るブリッツの特集番組。そして見えてくる、ブリッツの会場である巨大ドーム。観戦までの道中を映したスフィアは、最後に正面から駆けてくる子供の姿をとらえて、あっけなく終わった。オレにとっちゃ見慣れた、スピラ在住の二人には未知の景色だった。
 アーロンが身を翻(ヒルガエ)して、外に出ていった。オレとブラスカも遅れて出ると、元僧兵は指して聞いてきた。
「今のは、本線を撮(ウツ)していたのか」
「ああ、これから行く道のはずだぜ」
 言って、ウチからフリーウェイまでそんなに遠かったのか、と思い返す。―― チビが歩き疲れたってぐずった時、オレは構ってやらなかった。これくらいでへこたれてんのか。突きつけた仕打ちに、涙を流しながら無言で耐えたティーダは、謝ろうにも、ここにはいない。船動かして楽させてやるくらい何てなかったのに、今さら後悔しても遅い。
 ハラヘリの音が、召喚士からたちのぼる。急に音を立てられて驚いたオレが見下ろした隣の人物は、笑顔でオレを見返してきた。……はいはい、メシですね、キッチンに何かねえか見てやるから、無言でメシをせびんな。ちったあ照れるか、恥ずかしがりやがれチクショウ。つーかよ、もしオレが居なかったら、野宿ん時のメシはどうする気だったんだ、コイツら。こっちも今更だけどよ。


 瓦礫の中から見つけた、使えそうな毛布は三人分。大人サイズは仮眠とる二人が使って、子供用は見張りの寒さ凌ぎにした。ブラスカと見張りを替わって、床に横になったオレだったが、ソファーだったらしい綿椅子の足元で丸くなってるアーロンみたいにゃ、休めそうにない。どーしたもんかね。
 天井を見上げると、動きを止めてかなりの年月の経ったシーリングファンが目に入ってくる。横を向く。ウチじゃあブリッツの大会MVPでもらった楯やメンバーに渡される優勝記念トロフィーなんかを飾ってた台は、この家だと子供の賞状や楯置き場になっていた。その楯の周りを、幻光虫が漂ってた。そういや、ドアぶっこわしちまったな。迷子の訪問者を外へ送り返すべく、オレは起き上がると、毛布を広げて、足音をたてねえように光を追いかけた。
 眠らない街、ザナルカンド。その空に星が散っていた。―― ああ、オレのザナルカンドじゃなかったんだっけ。見たことねえのは当然だ。
 毛布を広げたまま出入り口で固まったオレを妙に思ったらしく、桟橋に直に座り込んでいたブラスカが声をかけてきた。追いたててた幻光虫が、召喚士の周りでゆらゆら踊っている。踊るさまに吸い寄せられたオレは、三角座りのブラスカを背後から抱えるように、大股開いて座り込んだ。持ってた毛布を羽織ってから、ブラスカの体に腕を回すと、くすぐったい、と静かな笑い声があがる。ブラスカは寄りかかってきた。密着したことで温かくなった他に、呼吸の間隔も伝わるようになった。スポーツ選手のオレに比べて、ブラスカの間隔は短い。浅い息しかしてねえのか、それともそれが常なのかは、無意識下で行われるもんを聞いてもしょうがねえ。
 頭飾りと頭巾を取っ払った召喚士の、長い髪から覗いた項(ウナジ)に誘われて、顔を近づけてみた。香油だか香水だかの匂いに気分が良くなって、鼻を埋めて吸い込むと、首が若干すくめられる。面白くなって舐めたら、「ひぁっ」なんて悲鳴があがった。
「ジェクト」
「わり、調子のった」
 抗議の声を出しながらも、振り向こうとはしないブラスカに甘えて、側頭に頬を付ける。オレの太い毛とは違って、ブラスカの髪は細いし柔らかい。本人は長さのせいで養分がいかない、と言ってたが、めくれば白髪も覗くそれは、ストレス痩せも影響してるんだろう。旅立ってから、日に日に艶も失せてるんだろうな。
 胴に回した腕を引いて、後ろから抱える。さっき舐めたのが災いして、ブラスカの体は強張ったままだ。現に、肩に顎を乗せて覗きこんだ横顔が、どうすりゃいいのか困って、紅くなってやがる。正直、匂いや反応の仕方に、ムラッとしてた。手を動かしゃ、胸や下っ腹だって触れるし、オレのムスコを奴の尻に押し付けてもみようとは思った。けど、もしブラスカがその先まで許しちまったら。考えて、辞めた。冗談で済ませられる内が一番いい。それに今は、そんな事で体力を無駄にしてる場合でもねえ。
 眠れねえんだ。場をつくろうつもりで呟いたら、思いの外疲れた音になった。ブラスカの強張った体は、その一言で弛んだ。今度こそこっちを振り返る。
「ここに辿り着いてから、君の動きを見ていて、そうなるだろうとは思っていたよ」
「察しのよろしいこって」
「元居た、しかし似て非なる場所に出くわして、何の感情も持たない方が妙だ」
 前を向いたブラスカは、抱えていた膝から左手を離して、腹を縛るオレの腕をさすった。それから、オレの右手を腹から剥がすと、指を絡めて、握ってきた。目的地に着いたのに、知らねえ場所だと途方に暮れるオレを、背中を叩いて励ます柔らかさに、言おうとした言葉が出なくなる。握って、揉んでくる、骨ばかりの手が、優しかった。
 手を握り返して、ブラスカの背に被さるようにくっつく。―― ついてきてよかった、と思った。もしべべルから解放されたとして、独りでザナルカンドまで戻れたか分かんねえし、実際に戻った先がこんな遺跡だと知って、発狂してた可能性もあった。実は今も、気分は底辺にあって、苛ついてる訳でもねえのにむかっ腹たってたが、『仲間』のお蔭で暴れずに済んでる。話を聞いてくれるだけなのに、ありがたいと感謝していた。
「はは……おめえらに、ニョウボとガキ、紹介してやろうと思ってたんだがな」
 また声が震えた。
 耳を傾けてくれてるらしいブラスカは、続きを待ってたようだ。けど、オレは何も言えなくなって、左腕でぎゅうと、抱きすくめちまった。振り返ろうとした召喚士の後頭部に額を押し付けて、こっちを向かせなかったのは、オレの情けねえ面を見せないためだ。
 意地張って頭を上げねえオレの腕の中で、深呼吸が二回行われる。かけられる体の重さが、あー信頼されてんだな、て思わせてくれて、胸が痛かった。
「不安になったら、自分は今ここに居る、と強く念じるんだ。自分がどんな存在なのかを悩んで、立っていられなくなる前に」
 それがどんな意図で言われたのか、ぼんやり察した。それから、こんなことを言える召喚士が、今のオレと同じように、悩んで苦しんできたとも知った。ブラスカは、きっと誰かにこう言って貰いたかったんだ、と。
「オレは……ここに居る」
「君は、ここに居るよ」
 色々と吐き出しそうになるのをどうにかしたくて、歯を食いしばる。くそ、鼻すすんなオレ。目が熱くなんのは仕様だ仕様。
 ブラスカは、静かに、オレに付き合ってくれた。いい匂いで宥めて、手を握って揉んで、オレの居場所を思い出させてくれた。


 海から桟橋に上がったところで、少々埃っぽいタオルが出てきた。照り始めた朝日を背に、ブラスカの笑みが見える。
「この海寒いな」
「北限に位置するからね。ぬるかったら異常事態だ」
「おお、そうだな! ……ま、おかげで、収穫があったわけだけどよ」
 瓦礫から探し当てたらしいそれを受け取って、オレの収穫物を渡す。真空状態で密閉されたまま海底に沈んでたこれは、いくら千年経ってるからって、食えねぇわけはねえだろう。それに、透明な瓶を受け取った段階で、中身が何なのかを理解した召喚士様が食べる気満々になってるから、今更渋っても手遅れだ。甘いもの好きな男って何つーんだっけ、スイーツ男子?
 昨日のうちに皮を剥いで血抜きしておいたベヒーモスの肉を、アーロンが船内で発掘してきた鍋に、ナイフで小切りにして放り込み、ブラスカがファイアで点した火にかける。肉の油が溶けだして音をたて始めた頃、ブラスカが抱えて離さない瓶を取り上げて、開封した。氷砂糖が、鍋の熱で水に変わって、肉に染みていく。……あー、ブラスカさん、指くわえんのは辞めなさいや、ほらちゃんと残してっから。
 海に潜る前に見つけておいた、同じく未開封だった缶を壊すと、非常食として保存されてたらしい乾パンが出てきた。メシとしては十分だろう。氷砂糖を一粒口に放り込んだブラスカのはしゃぐ笑顔に、アーロンと二人で肩を落として、朝食開始となった。
「今日はゆっくり進んで、体を馴らすとしよう。案内はジェクトに任せる」
「おう」
 甘く柔らかくなった肉をかじりながら、頷く。オレの面と、ブラスカの笑顔を交互に見比べるアーロンが、晩のうちに何かあったことを察知したみたいだが、口を挟まずに乾パンを噛み砕いた。
 桟橋から、遺跡群を振り返る。ところどころ崩れちゃいるが、過去に何人も通って、更には究極召喚まで手に入れた連中が駆けたところだ、オレ達なら余裕だろう。見たところ、何ヵ所か脇道があるから、休むならああいう場に降りるだけだ。
 鍋と空き缶は、まとめて海に返しておいた。ついで、どっかの街でもらった、押し花の紙栞(シオリ)を水に入れる。死んじまったらしい家主達に、生かしてもらった礼をした。手向けの花が貰いもんで、済まねえな。海から目線を船に移す。この家がオレの家だったとは、もう思わなくなっていた。ザナルカンドに戻れねえと、結論を出してから、気分の回復は早かった。今のオレがやることは、召喚士ブラスカを護るガードとして、勤めを果たすことだ。もう、迷わない。
 桟橋から続く、石の渡り道を先に進んでいたブラスカから、祈りの歌が発せられた。その向こうでは、アーロンが海に、腰にさげてた徳利の酒を注ぎ落としている。
 二人に追いついたオレは先頭に立って、気合いを入れて、一歩を踏み出した。


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