【KOF】アッシュ誕生日(くずは)

2009年02月14日 23:58

 本作品は、サークル:空星路 発行の『祝ってもいいでしょ? -1冊にまとめたんだ-』に収録しています。
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 以下、序文です。




祝ってもいいでしょ?  2月14日


 目についたカフェテリアで足を止め、散布しがちな自身の財布を取り上げた堕瓏(デュオロン)に強請(ねだ)り、入店したのが二十分前。午後のティータイムで客足が途絶える様子は無い。女性客ばかりかとも思ったが、所々男性客が混じっている。
 好物のザッハトルテを待つ中、少年は珍しく溜め息を吐いていた。美形と呼ばれる類に属する連れが、晴れない表情を作るアッシュ・クリムゾンに「どうした」と問う。

「バレンタインって、何で二月十四日なんだろうネ?」
「……は?」

 少年の台詞で、堕瓏は今日が聖バレンタインデーだと、ぼんやり思い出した。縁のない世界にいたので、特に考えたことがなかったのである。

「貰う宛が?」
「無い無い。無いから、わざわざ出てきて、食べようとしてるんでショ。そう言う堕瓏は居る訳?」

 顔の右半分を覆う前髪で手悪さをしつつ、アッシュは堕瓏を上目遣いに見る。「居る訳が無いだろう」と青年も同意して首を振った。暇潰しのパートナーに選ぶ位だ、互いに独り身なのは分かりきっている。
「まだかなぁ」と従業員用の出入り口に目を向けた少年が、短い「うわ」という唸り声を上げた。何事か、と顔を上げた堕瓏の横を通り、それはケーキ皿を盆より下ろしながら、にこやかに口を開いた。

「ザッハトルテとクローバー蜂蜜のロールケーキ、お飲み物はアイスミルクティと烏龍(ウーロン)茶で宜しかったですね?」

 瞬く二人に対し、一瞬の沈黙を置いて、店員は笑顔から一変、渋い表情を浮かべた。

「済みません、暇潰しです。《サンズ・オブ・フェイト》は今現在、『超居づらい』状態になっているので」

 小声で吐き出した台詞に、アッシュも堕瓏も吹き出す。
 あの『殺し屋』が、まさか暇潰しの為にアルバイトをしているなど、思ってもみなかった。臨時で老夫を雇う店も、彼が礼儀作法に長けていたからOKを出したに違いない。
「追加良い?」とメニューの冊子を広げたアッシュが、オズワルドをすぐ横へ招いて、話を詳しく聞き出す。畏(かしこ)まりました、少々お待ち下さい。笑顔で退場する老紳士を目で追い、堕瓏はストローの袋を開けながら、それとなく尋く。

「内容は」
「えーと……女性陣、主に一名から、『逆チョコにしろ』って抗議が出てるみたい」

 答えるアッシュは、ミルクとガムシロップをコップの液体へ垂れ流し、ニコニコしながらストローで掻き混ぜる。
 女性から男性へ、ではなく、男性から女性へチョコレートを贈るのが流行りだと、公共の電波で幾人も話していた気がする。今現在拠(よ)り所にしている《サンズ・オブ・フェイト》には、当然ながら女性も居る訳で、アッシュが聞き出した話題が上がるのは自然な事だ。まぁ『彼女』なら、そんなブームが来ようと来まいと、抗議していたに違いない。
 しかし、アッシュも堕瓏も、只今外出の身。『そんな事は聞いてない』と押し通せば、何とかなるかもしれない。……何ともならない可能性の方が、ずっと高いのだが。

(本文へ続く)
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コメント

  1. アリス | URL | -

    アッシュとエリザ!

    アッシュとエリザ!
    アッシュとエリザ!


    …アッシュとエリザ?


        アッシュとエリザ!!


    アッシュがかわいいんですけど!!
    どうしたらいいんですか? 
    何日かたったら落ち着くかと思ったんですけど、やっぱりアッシュがかわいいんですけど!
    おもしろかったです。特に後半が好きです。

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