【KOF】溝口誕生日(くずは)

2009年01月01日 00:01

 おめでとうです。
 いやほら、喪中の方も、「おめでとう」だけなら言っても良いらしいので(←経験者。


 本作品は、サークル:空星路 発行の『祝ってもいいでしょ? -1冊にまとめたんだ-』に収録しています。
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 以下、序文です。




祝ってもいいでしょ?  1月1日


 街はすっかり冬の装いで、澄んだ夜空にネオンがじわりと滲んでいる。新年まであと十五分といった所で、《サンズ・オブ・フェイト》内から、いくつもの人影が飛び出してきた。行き交う人々の波に飲まれぬよう、団子になって歩き出す。



 近くの教会で新年の祝いをすると、巡(まわ)ってきた回覧板から情報を得たのだ。乗り気だったのはソワレとマリーだけで、他の面々は、その時点では関心も寄せていなかった。アッシュなどは「寒い中よく出る気になるよネ~」と、批判まで口にする始末である。
 そのダルダルモードが一転したのは、面々を呼びに来たルカの一言だった。

「お菓子貰えるんだって! ミゾグチ行こ~!」
「お菓子~♪」
「ぅおーい、寒いの嫌なんちゃうんかーい」

 誘いに来たルカに名指しされた溝口誠(みぞぐちまこと)は、アルバから受け取ったカップの中身を一気に飲み干した。先に廊下に飛び出したアッシュへ、突っ込みを入れる事は忘れない。ルイーゼがクスクス笑って、それがすぐ皆に伝染した。
 数日前の買い出しで購入したジャンパーを羽織り、せがむルカを肩車し、溝口は同行者を求める。ルカだけならおんぶや抱っこで何とかなるが、好き勝手動く少年までは流石に面倒見切れない。初めから乗り気だったソワレとマリーが上着を手にした。道中がかなり不安になったのは言うまでもない。

「ほな、行ってくるわ」
「土産よろー」
「頼む位ならシェンも来れば良いのに」
「年寄りは家でぬくぬくさせて貰いますよ、と」
「おーいジィさん、人を勝手に年寄り仲間にすんなー」
「ではオッサンか」
「アンタもボケんな兄貴の方!」

 玄関を出るまでの時間が長かった。



 教会の灯(あか)りは、集まった者達が持つ蝋燭(ろうそく)の炎のみである。普段ならライトに照らされ煌々と輝くステンドグラスさえ、ぼんやりと模像を佇(たたず)ませるだけに留まった。街一番のパイプオルガンが構える屋内で、五名は同じ長椅子に落ち着く。

「……何や、キリストさんの日と間違えとるのんか」
「ここではこんな具合なんだよ……ジャパンは違うのか?」

 火に向かって息を吹き掛けてくるアッシュから蝋燭を守りつつ、ソワレが応じる。わいわいと話し始めた大人二人に、「静かにしなさい」とマリーの拳骨が落ちたのは、言うまでもない。
 いつの間にか神父の説教が終わっており、複数人のシスターを子供達が囲んでいた。

「Happy New Year」

 神父がわざわざ声を掛けにきた。ソワレが《サンズ・オブ・フェイト》の人間だと知っている為であろう。自衛団として活動してきた甲斐あってか、畏縮する様子は無い。……ここに来たのがソワレだけ、なのが正解かもしれない。もしアルバが相手なら、神父はまた違った反応をしていた筈だ。
 少数量のコインで寄付を表し、駄賃の菓子を受け取る。貰ったらすぐ中を確認する癖を出すアッシュから、「あー」と溜め息が出た。

「チョコじゃなかった……」
「……神父さんに聞こえるわよ」

 アッシュの言動をマリーが嗜(たしな)める。
 包みの中身はランダム、何が来るか分からないのが楽しみの一つでもあるのだが、未成年二名は唇を尖らせている。そこへ、最年長のお節介が加えられた。

「交換すりゃえぇやないか。ほれ、ワレは飴ちゃんやし、お嬢はチョコや。えかったの」

 アッシュの襟首を摘まみ、ルカと向かい合わせて、左右同時にポンポンと頭を撫でる。
 仲良く交換する二人を尻目に、着信を受けたソワレが、届いたメールへザッと目を通した。表情を若干悪い方に歪ませ、横に居たマリーに内容を伝える。彼女も同様の表情を浮かべた所から、《サンズ・オブ・フェイト》方面で良からぬ事が起きているのだと溝口は察しをつけた。

(本文へ続く)
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